このところ、「社会のさまざまな側面でデジタル化が急速に進んでいる一方で、アナログとデジタルを共に使って、より身体性を感じられる体験や心情的な近さを覚えるつながりを上手く生み出し、それを楽しんでいる人が少しずつ増えて来ているのではないか」と感じる機会が度々あります。それは単なる懐古趣味やデジタルの否定ではなく、アナログとデジタル、リアルとバーチャルといった区分けに捉われない「オーガニックな価値観」とでも言えるものではないかと思っています。生活のスタイル(自然に親しみ、ゆったりと質素に暮らすこと/英辞郎 on the WEBより)や関係性(多くの部分が緊密な連関をもちながら全体を形作っているさま/コトバンク) としてのオーガニックを、今年はより自らの暮らしに取り入れていければ良いなと考えています。
デジタル化が利便性や効率を飛躍的に向上させたことは確かですし、自分も大いにその恩恵を受けています。しかし、同時に暮らしのペースが格段にスピードアップし、また自分が「オン」でいなければならない時間が増えたことも実感しています。これらは悪いことばかりではありませんが、効率一辺倒であったり、「何でもデジタルがいい」といったりする考え方には、個人的には染まり切れない部分もあります。
時と場合によってデジタルとアナログを使い分けるというのは、多くの人が行っている当たり前のことかもしれません。でも、特に昨年は自分にとって「非デジタル」な体験の印象が強い年でした。
2つほど例を挙げると、まず、「TEDx」のリアルなイベントに参加したこと。そこで出会った人たちとの交流の中で感じた刺激や高揚感は、良い悪いの話ではなく、TEDトークの翻訳とレビューをネットを介して行うのとはまた別種のものでした。次に、家からあまり遠くない場所にあるプレーパークに子どもを連れていくようになったこと。プレーパークは、子どもたちが既存の公園の枠組みに捉えられない自由な遊びを行えるようにと造られた場所です。"プレーリーダー"を中心とする大人たちが見守る中、かまどでの火焚きから本気の泥んこ遊び、小屋づくり、木登りetcが繰り広げられていきます。元々子育ては、身体性に富み豊かな感情と直に接する機会の多い活動だと思うのですが、その中でも特に、この言わば非常にアナログな場所が持つ力を強く感じました。ともするとメディアを通じた体験だけで満足したり、わかった気になったりしてしまいがちな中、リアルな体験から得られる刺激の豊かさに改めて気づいた年でした。
リアルな体験に出かけるのは、ある程度の手間や時間がかかるものです。でもそこからは楽しさや迫力がリアルなものとして全身に伝わってきます。参加の仕方によっては、人とのつながりも生まれます。仕事や雑事に追われてなかなか思うように時間やエネルギーを割くことができないことも多い中ではありますが、本やネット、テレビなどを通じた体験だけでなく、自らの志向性に近い活動を行う場には積極的に参加し、そこで得た刺激やつながりを広げていくことを大切にしたいと思います。
こうした体験は、デジタルの世界と結びつけることで一層豊かなものになるはずです。自分が関心を持つ分野についての情報を集めたり、参加した際の気づきや感想を共有したり、そこで知り合った人との交流を深めたり、あるいは運営側であればスタッフ同士での打ち合わせやコミュニケーションに使ったりということに、デジタルのツールは大いに役立ちます。デジタルがもたらす効率性や利便性の助けを得られるところはそれを活用しつつ、必要だと感じたことについては手間や時間を惜しまずに力を注ぐこと-アナログとデジタル、リアルとバーチャルの境界に捉われることなく、それぞれの長所を活かしながら自分の志向性に沿った体験やつながりを広げられるような1年にしていきたいと思っています。
2011年1月2日日曜日
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