僕たち、こうして店をつくりました 独立開業のニュースタンダード | |
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全部で9店が紹介されていますが、それぞれの店にかける料理人たちの思いや、それを実現するために取ってきた具体的な行動が、開店や改装に至る金銭面まで含め、バランス良く取材されています。この本を広く「起業もの」に含めるならば、最近読んだその系統の本の中では一番面白かった作品です。
この本に出てくる人たちが、志を持った料理人であり、また自らの店の経営者であるということを特に印象づけられた言葉を、いくつか抜粋・引用します。
「みんながワイワイやっているのを眺めながら、将来僕もこういう場を作りたいと思ったんです。楽しそうな人たちを端から見ているのが、僕は好きなんですね。」(三鷹バルの一瀬智久さん)
「"料理をつくる"ということを知らない人が経営する店は、何か食欲の根幹を刺激しない気がしていた」(アヒルストアの齊藤輝彦さん)
「三國シェフが世界を唸らせる人であるならば、僕は家族や友人や地元の人たちの目線で仕事をする人間。」(シエル・ドゥ・リヨンの村上理志さん)
「わざわざ足を運んでもらう店でなく、人がたくさんいる賑やかな場所で、そこに集まる人たちに気軽に来てもらう店をつくろうと思いました。」(パッソ・ア・パッソの有馬邦明さん)
もうひとつこの本を読んで感じたのは、16~17歳ぐらいで「将来は自分の店を持つ」と心に決め、そのために必要な知識やスキルを長期的に見据えながら就職する店を決めたりイタリアやフランスなどへ修行に赴いたりする、といったプロセスを一つずつ積み上げてきた人が多いんだなということでした。料理人の世界では当たり前のことなのかもしれません。でも、会社員家庭に育ち、普通に大学を卒業して就職するという道を辿ってきた自分にとっては、彼らが若いころから将来への夢をはっきりと描いていること、そしてそれを実現するために計画的に自らを磨きあげていることにある意味驚きを感じました。それが"料理人"と"会社員"という環境的なものなのか、あるいは個人的な資質なのかはわかりませんが。
料理人の世界、特に自らの店を持つということは自分の腕で勝負するということであり、まさにプロフェッショナルの世界なのだな、と強く感じました。
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