2011年4月23日土曜日

リサ・ガンスキー:次世代のビジネスは「メッシュ」である(日本語訳文)

以下は、TED Talksのひとつ「リサ・ガンスキー:次世代のビジネスは『メッシュ』である(Lisa Gansky: The future of business is the "mesh")」の、拙訳による日本語訳文です。このトークの紹介についてはこちらをご覧ください。





これからお話しする「メッシュ」は 私たちとモノとの関係を 根本的に変容させるものです どんな場合も どんなモノにも当てはまる というわけではありませんが しかるべき時が来れば ある種のモノやサービスを利用することが 所有を意味しなくなります メッシュによって より良いモノを シェアしやすくなります シェアは昔から行われてきました 例えば交通機関 アムステルダムのカフェ・バーでは ワインや食べ物 その他素晴らしい体験を シェアしてきました 他の娯楽もそうです 競技場や公園 コンサート場に図書館 それに大学などは すべて シェアの場となるプラットフォームです シェアの原点であり 到達点でもあるのは この母なるシェア・プラットフォーム なのです

メッシュとは何か? 何が後押ししているのか? なぜ今なのか? 背景にある様々な要素を お話ししたいと思います その1つは不況です 不況により私たちは モノとの関係を 価値との兼ね合いで 考え直すようになりました 価格と価値を結びつけて 見るようになってきています 次に 人口の増加と 都市への集中です 人が増え 場所が狭まり モノが減ります 気候変動も影響しています 人々は 個人のストレスを減らし コミュニティや地球の負荷も 減らそうとしています また 最近では 様々な分野で 世界的な巨大ブランドへの 不信感が出て来ています そこに余地が生まれます 調査によれば アメリカやカナダ 西欧では 聞いたことのないような 地元の会社やブランドを 受け入れる人が増えています 以前であれば 信頼できると感じた 有名ブランドを選んでいたでしょう 最後に 今はかつてないほど世界中の人が つながっています 隣り合って座るときは別ですが

(笑)

もう1つ注目すべきことは 私たちが 何十年にもわたって 何千億円というお金を 投資してきたものが 資産として引き継がれていることです ある場所から別の場所に移動したり 物を運んだりする 物理的なインフラのほか 人とつながり 様々なプラットフォームや 様々なシステムを作るウェブや携帯も資産です こうした技術や インフラへの投資は 私たちが受け継いだ資産です そこから 斬新でかつ興味深い方法で 関わりを生み出すことができます

私が思うに メッシュ企業は 3つの要素を組み合わせます まず 互いにつながり合う力 次に GPSとウェブ機能付きの 携帯電話を皆が持ち歩いているので いつでも どこでも 人やモノを探せることです 3つ目は 物理的なモノを 地図上で探せることです レストランなどの所在地はもちろんですが GPSやRFIDなどの 無線通信技術を使えば それにとどまらず 車やタクシー 輸送機関など 刻々と移動する物体の動きを 追跡することも可能です これにより 多くの場合 所有するよりも便利で安価に モノやサービスを利用できる 環境が整います

私はジップカーのファンです 車や自転車のシェア・サービスを 使ったことのある人はどれぐらいいますか? たくさんいますね ジップカーは 世界最大の カー・シェアリングの会社です カー・シェアリングはこの会社が発祥ではなく ヨーロッパで始まりました 創業者の1人がスイスに行った時 実際に利用されているのを見て 「 これはすごい ケンブリッジでもやれそうだ」 アイデアを持ち帰って もう1人の創業者 - ロビン・チェイスと共に女性2人で始めました ジップカーは要点を押さえていました まず ブランドは声 製品は土産だと しっかり理解していました だから カー・シェアリングの演出が とても上手でした セクシーで斬新で カッコイイものにしたのです ジップカーの会員は ジップスターと呼ばれます 用意した車は 穴開きの払い下げパトカー などではなく かっこいい車です 大学をターゲットに定め 車を ターゲット層の好みに 合致させているので 気分良く乗れます きれいで信頼できて ちゃんと動く車です

ジップカーはブランディング戦略が的確でした 自身が 車の会社ではなく 情報を扱う会社だと しっかり理解していたのです 車を買うのであれば 販売店に行って店員と話し なるべく早く決めてしまいます カー・シェアリングを利用する人は 通勤に電気自動車を使ったり 家仕事のためにトラックを借りたりするかもしれません 叔母さんを空港に迎えに行く時はセダンですし 山にスキーに行くならば それに備えた 装備品をつけるでしょう その間 ジップカーでは 客の行動や利用状況について あらゆるデータを集めているのです ジップカーなどのメッシュ企業にとって 利用者を驚かせることや コンシェルジュのようなサービスを提供することは ただの選択肢ではなく 必須だと確信しています 客は会社に多くの情報を与え 会社は 客の乗車状況を知ることが できるのですから 利用者が次に何を望むのかを 予測しやすい立場にいます

平均すると 1日にどれぐらい車に乗ると思いますか? 何パーセントでしょう? わかります? いいところを突いてます 私の予想は 20パーセントでしたが アメリカと西欧を通じた平均は 8パーセントです 仮にそれを10パーセントだとしても 残りの9割の時間 - 個人的にも費用がかさむし 街の環境整備も必要で いろいろ大変なのに - 9割の時間 停車しているだけなのです そういう訳ですから 無駄を絞れば 様々な価値が見えてくる というのも メッシュのテーマです それを踏まえ 2000年 ジップカーが設立されました

そして昨年2010年 2つの会社が設立されました イギリスのホイップカーと アメリカのリレーライドです どちらも個人間で車を共有するサービスです カー・シェアリングを機能させる2つの要素は 車が利用可能であることと それが 今いる場所から 1~2ブロック以内にあることです 家や会社からその範囲にあるのは 近所の人の車でしょうし 多分 借りられます そんなところからこのビジネスが生まれました ジップカーが誕生したのは10年前 2000年のことです 車を1,000台に増やすまでに 6年かかりました 昨年4月創業のホイップカーは 6ヶ月で 1,000台の車が使えるようになりました 非常に興味深いことです 自分が使っていない時に 近所の人に車を貸すことで ひと月に200~700ドル程度の 収入が生まれます ここはデトロイトなので 車業界で働いている人が この中にいるとよいのですが (笑) 私は技術サイドの人間なので ケーブルテレビに対応したテレビや 無線LANを内蔵したノートパソコンのように すぐにでも カー・シェアリングに対応した 車が販売されればよいなと思います 車の使い方が自由になり 所有者の選択肢が増えるからです そうなりつつあると思います

メッシュビジネスの可能性と課題を考えてみると - ジップカーやネットフリックスのように 完全にメッシュを取り入れたビジネスもあれば 多くの自動車会社や車メーカーのように カー・シェアリング・サービスを 独自のやり方で始めたり 試験的に第2ブランドを 立ち上げたところもありますが その可能性と課題は シェアで魅了することです 生活する中で シェアに圧倒的な魅力を感じることが 実際にあります それを繰り返し 拡大するには どうすればいいのでしょう? ソーシャルネットワークで結ばれているので 限られた場所で 喜びを共有するのは簡単です 互いに結ばれているので 喜びはすぐに伝染します 素晴らしい体験は ツイートするか 5人に話せば拡散します その逆も起こり得ます 逆パターンの方が多いかもしれません

ロサンゼルスのルド・トラックは おいしい料理を移動販売して 多くのファンを得ています 自分がテクノロジー分野の起業家だからだと思いますが 私は物事をプラットフォームとして見ます プラットフォームとは誘引することです クレイグスリストの作成 iTunesやiPhoneの開発者ネットワークの構築 フェイスブックの作成など こうしたプラットフォームに誘われて 様々な開発者 様々な人々が 特定の利用者に向けた アプリを作るチャンスやアイデアを 持ち寄ります 全く驚かされます この部屋にいる人の中で 2年前にマーク・ザッカーバーグが 自分たちはプラットフォームを作ると言った時 フェイスブックやその周辺における その後のアプリの変化を 予測できた人はいないでしょう

同じように考えれば 都市もプラットフォームだと言えます もちろんデトロイトもそうです 生産者や芸術家や起業家を 呼び寄せることで 燃えるような創造性を刺激し 都市を元気づけることにつながります 都市は参加も呼びかけます 歴史的にも あらゆる参加を呼びかけてきました 都市には他にもできることがあります 例えば 市が 交通データを公開するのです グーグルは交通データのAPIを公開していて すでにアメリカで7~8の都市が 交通データを提供しており 開発者たちがアプリを制作しています 私がポートランドでコーヒーを飲んでいて 半分カフェラッテが残っていた時に 突然 店の小さなモニターに映し出されたのは 次のバスは3分後 電車は16分後という 表示でした 信頼できる本物のデータが 目の前に現れるので 安心してカフェラッテを飲むことができました

素晴らしいチャンスは アメリカ中に転がっています 空き地になった商業・産業空間の約21%には可能性があります そういった空間は活気がありません 周辺地域も活力がなく 人々の関心も欠けています 期間限定で出店する ポップアップ・ストアをご存知ですか? たくさんいますね 私はこれが大好きです メッシュを大いに活用しています 私の家のそばのオークランドには あらゆる種類のレストランがあります そこに3週間に一度 ポップアップの雑貨屋が出ます 食べ物が好きな人のため 人がふれあえる催しを開いています とても素敵な催しが 店の入れ替わりが激しい地域で開かれています そうこうして 1年ほどたった今では 店を借り 製品を作り 拡張を始めました 尖鋭的な芸術家気取りだった地域が 今ではずっとお洒落で 受け入れられやすくなりました 別の例を挙げましょう 手工芸品好きの女性が手がけるクラフティ・フォックスは ロンドン周辺でポップアップの雑貨フェアを開いています こうしたことは 各地で行われています 私が思うに ポップアップのお店が行っていることの1つは はかなさと切迫感を生み出すことです こうした店では ビジネスで好まれる 「売り切れ」を演出します 信頼と注目を集める機会があるのは 素晴らしいことです

メッシュを利用し プラットフォームを構築すれば 物事を規定し 磨き上げ 普及させることができます 起業家として何かをテストしたり 市場を見たり 人々と会話したり 話を聞いて 改良を施した上で再び戻るといったことが可能になります 費用対効果が高く メッシュらしさがあります インフラがあるから可能なことです

最後に 皆さんを勇気づけたいと思います 失敗談もお話ししたいのですが ここではやめておきます (笑) 無駄を見つめ直し 寛大な気持ちで 互いに貢献できる方法を 考えながらも なおかつ 経済状況を改善し 環境も改善したいのであれば 失敗の共有こそ重要です 例えば ヴェリブが 2007年にパリで始まりました 大規模な自転車の シェアリングサービスという 大胆な試みでした 何度も失敗を重ね いくつかの点では大成功を収め 失敗についても 成功についても とてもオープンにしていました やむを得ずかもしれません だから バルセロナのB.C.や アメリカのBサイクル ロンドンのボリス・バイクなどは パリでヴェリブが経験した バージョン1.0の失敗や 高価な学習レッスンを 繰り返す必要がありませんでした つながり合うことで 失敗と成功を共有する機会が得られます

私たちが目にしていることは 始まったばかりです メッシュ企業は 人を誘い込み 関心を惹きつけていますが まだ初期の段階です 私のウェブサイトに掲載されたメッシュ企業は 当初 1,200社ほどでしたが この2ヶ月半で 3,300社ほどにまでなり 日々増えています とは言え まだ始まったばかりです

皆さんも是非 この流れに参加して下さい どうもありがとう

(拍手)

※このトークの訳文は, Satoshi Tatsuharaさんにレビューをしていただきました。

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