2011年2月20日日曜日

子どもと自転車

交通公園という、子どもが自転車の乗り方や交通ルールなどを学べる公園に行ってきました。子どもが自転車を借りて、信号や踏切、「とまれ」のサインなどがあるコースを走ることができる場所です。うちの子は3週間ほど前にここで練習して、補助輪なしで自転車に乗れるようになりました。

交通公園の良いところは、それほど広くはないとはいえ車が入って来ない専用のコースなので、一般の道よりもずっと自由に子どもを走らせることができる点です。補助輪なしで乗れるようになって以来、近くのスーパーまで買い物に行く時もいつも「自転車で行きたい!」と言って練習してきてはいたのですが、やはり普通の道では歩行者や他の自転車、車なども多く、なかなか「好きなように走ってきていいよ」とはいきません。なので乗れるようになってからの上達の度合いがあまりよくわからなかったのですが、今日はほぼ完全に自転車を乗りこなしていて、改めてこの年代の子どもの吸収の早さに驚きました。

交通公園には他にも同年代で補助輪なしの自転車に乗っている子が何人かいましたが、そんな姿を見ながら「子どもって本当に自分の体の一部みたいに自転車を動かすんだな」と思いました。ちゃんと乗れるようになった子どもと自転車には、一体感のようなものが感じられたのです。これは、大人が使う自転車とは別の乗り物なのではないか-という印象さえ受けるほどに。

それは恐らく、子どもが自転車に乗ること自体を心から楽しんでいるからなんだろうなと思います。アメリカで「ものづくりの学校 (Tinkering School)」を主宰するゲーバー・タリーは、このブログでも紹介したTEDトーク(こちら)の中で、ポケットナイフを子どもが持つ「初めての万能ツール」だと位置づけ、その使い方を学ばせるよう説いています。補助輪なしで自転車に乗れるようになるということもそれと同じです。自転車を自在に乗りこなすことができれば、これまでに体験したことのないスピードを自ら生み出すことができる。そして、自分の力で行ける範囲を大きく広げることができる。そんな大きな可能性を全身で感じ取っているからこそ、夢中で自転車の練習をし、あたかも熟練の職人が道具を使うかのような一体感が生まれるのではないか、と感じました。

2011年2月19日土曜日

「ブライアン・グリーンが語るひも理論」(日本語訳文)

以下は、TED Talksのひとつ「ブライアン・グリーンが語るひも理論(Brian Greene on string theory)」の、拙訳による日本語訳文です。このトークの紹介についてはこちらをご覧ください。


2011年2月14日月曜日

「ブライアン・グリーンが語るひも理論」(紹介)

自分がこれまでに翻訳したTEDトークを紹介するエントリです。

「ブライアン・グリーンが語るひも理論 (Brian Greene on string theory)」

[TED2005, 19分10秒]

理論物理学者で、超ひも理論の提唱者として知られるブライアン・グリーンによるトークです。原子や素粒子よりもさらに小さな物質の基本単位として、ひものような振動するエネルギーの繊維があるとし、そのモデルに基づく宇宙の構造を説明しています。

自分は物理について全く詳しくないので、ただ「10次元の空間と1次元の時間を持つ宇宙」と言われても想像の範囲を超えています。でもこのトークでは、アインシュタインやテオドール・カルツァなど、時空の性質についての先駆的な研究をしてきた人たちの業績を振り返りながら、また平易な例を用いながら高次元宇宙についての説明をしているので、何となくはそれがどういうものなのかイメージできました。講演原稿を見ながら訳している時は、随分と同じことを繰り返し言ってるなという気がしていましたが、動画とともに見直して、「こういう難解な話を一般向けにする時は、これ位かみ砕いて繰り返し説明しないとわからないな」と実感しました。それぐらい丁寧な説明がされているトークだと思います。

ちなみに、ブライアン・グリーンはつい先月(2011年1月)に新著「The Hidden Reality: Parallel Universes and the Deep Laws of the Cosmos」を出版しました。僕は読んでいませんが、Amazon.comで書評やレビューを見ると(こちら)、かなり高評価を受けているようです。早く邦訳が出てくれると良いなと期待しています。

<その他の関連リンク>
・ウィキペディアでの「超ひも理論」の項目(こちら
・コロンビア大学の教員紹介ページ
・著書「エレガントな宇宙―超ひも理論がすべてを解明する」(2001年)
・著書「宇宙を織りなすもの―時間と空間の正体」(上)(下)(2009年)

2011年2月13日日曜日

桶の水とチームワーク

子どもの頃に学校で先生にされた話というのはもうほとんど覚えていないのですが、小学校3~4年の時の担任だった六車先生という女性の先生に教わったことは、今でも時々頭に浮かんでくることがあります。子どもの心をつかむのが非常に上手な先生だったのですが、特に印象深かったのが「桶の水」の話です。細かい違いはあるかと思いますが、大体こんな内容でした。


○年□組を一つの桶だとすると、クラス40人のみんなは一人ひとりが
桶の側板です。40枚の側板がぐるりと一周して、桶になるのです。

コップを水で一杯にして、その上からさらに静かに水を注ぐと、
水がコップの縁よりも少し盛り上がって入るのを知っていますか?
桶も同じです。みんなで力を合わせれば、側板の高さよりも
多くの水を入れることができます。

でも、どこか1枚でも側板の高さが低くなってしまうとどうなるでしょう。
そこから水が流れ出し、桶を水でいっぱいにすることはできません。

クラスで何かに取り組むということは、桶に水を入れるということです。
「自分は低い側板でいいや」と考えるのではなく、みんなで協力してください。
そうすれば、一人の力ではできないものを作り上げることができます。


どんな流れでこの話が出てきたのかは忘れてしまいましたが、内容からすると、恐らくはちょっと説教をしなければ、という状況だったのではないかと思います。ただ、先生は声を荒げる訳でもなく、黒板に桶の絵を描きながら静かに話をしていました。その姿はよく記憶しています。

これが言い伝えとかことわざのように、昔から伝わる有名な話なのかどうかは知りません。水の表面張力のこととか、今考えるとちょっと高度な内容が含まれている気もします。でも、大切なのはそのあたりの物理法則とかでなく、先生が子どもにもわかりやすいようにチームワークの大切さを話したということです。だから自分は今でもこの話を覚えているのです。

人の能力ややる気、志向性はさまざまです。だから実際のところ、人を桶の側板に例えるならば高さはバラバラなのかもしれません。でも何かをチームとして行う時には、それぞれが自らの持ち分を果たしながらも、側板の高さを合わせてチーム全体の成果を最大にすることも考えなければならない。 - 先生の話を今の自分が解釈しなおすと、こういうことなんだろうと思います。

2011年2月11日金曜日

種田山頭火

少し前、何気なく手に取った種田山頭火の句集にすっかりやられてしまいました。何でそれを読もうと思ったのかもはっきりと思い出せないのですが、山頭火が作った句の一つ一つが、自分の中にずしーんと響いてきました。

種田山頭火(1882-1940)。俳人ですが、自由律俳句という、五・七・五にとらわれない形式の句をたくさん残しています。放浪の暮らしを送りながら詠まれた山頭火の句からは、孤独ややるせなさを受け入れた上で周囲の自然を温かい目線で描いたようなものが多くあり、自分はそこに特に惹かれたのかなという気がします。彼の句集は、紀行文学として読んでも非常に面白いものだと思います。

印象に残った句を、いくつか紹介します。

「あの雲がおとした雨にぬれてゐる」

「雪空の最後の一つをもぐ」

「けふもいちにち風をあるいてきた」

「うれしいこともかなしいことも草しげる」


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