ミッドタウンのデザインハブで開催中の「日本のデザイン2011」展(6/5まで)で行われた梅原真さんのトークショーに行ってきました。
「日本のデザイン2011」は、3人のデザイナーが「Re:S(りす)」の編集長などを務める藤本智士さん、そしてカメラマンとともに日本の地方を旅して、デザイナー独特の視点からその土地を見つめる、という企画です。参加したデザイナーは梅原真さん、森本千絵さん、山中俊治さん。それぞれ、秋田、兵庫、鹿児島(種子島)へと旅をしました。
デザインハブにはその旅の模様が展示されています。会場内に透明のビニールシートを何枚も吊り、そこに旅の様子が写真と文章、さらにツイッターでの当時のつぶやきなども交えて紹介するという内容。会場内を歩き回りながら上質の紀行文の「読み歩き」をするような構成がとても新鮮に感じられました(3つの旅の記録が文章でもしっかりと書かれているので、ちゃんと読もうとするとかなり時間がかかります。45分~1時間ぐらい見ておいた方がよいかも)。
この企画展に関連して、旅に出たデザイナーとカメラマン、そして藤本さんで旅を振り返るトークイベントが行われました。3日間の開催の中で、僕が行けたのは、梅原さんが参加したこの日だけ。他の2人を招いた回にも行きたかったのですが、仕事の都合でそちらは無理でした。でも、10年ぐらい前に「砂浜美術館」のことを知ってそのコンセプトに衝撃を受けてから、ずっとお話を伺ってみたいと思っていた梅原さんのトークがナマで聞けただけでも、これは本当に嬉しい機会でした(梅原さんが東京で講演やこうしたイベントに出ることはほとんどないのです)。
梅原さんは、地元・高知を中心に、一次産業の産品やサービスに関わる分野に特化したデザインを行っています。その作品やデザインの背景は、著書「ニッポンの風景をつくりなおせ 一次産業×デザイン=風景」の中でも紹介されていますが、イベントでも梅原さんのデザインに対する哲学を感じ取れるような発言が端々にありました。印象的な言葉をいくつか紹介します。
「デザインは人生相談から始まる。」
「コミュニケーションを上手くできるようにするのがデザイン。かっこいいとか悪いという問題ではない。」
「スケールが合っているということ。それは人の幸せに大いに関係している。」
デザインとは、ただ単にグラフィックを指すのではなく、売れない農産物や加工品などを抱えた農家や漁師の人が相談にやってきて、そこからデザインの仕事が始める。そして、地元の遺伝子を適度に織り込みながらデザインすることで、コミュニケーションのスイッチを入れる。それが製品を売り、経済を回し、一次産業を持続させることにつながる。-そんな哲学です。
梅原さんの言葉を聞いていると、また、「日本のデザイン2011」の旅の途中で3人のデザイナーが出会った地元の人々のエピソードを読んでいると、「ローカルが元気で幸せであること」の大切さが身に沁みて感じられました。いま自分はボランティアでTEDの活動に携わっています。これは、国境や言葉の壁を超えて良いアイデアを広めていこうという言わばグローバルな方向性をもった活動ですが、そうしたグローバル性と、梅原さんや「日本のデザイン2011」が提示しているようなローカル性を上手く結びつけることができたらすごく面白いのではないか、という思いが心に浮かんできました。
2011年5月19日木曜日
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