21日(土)に開催されるTEDxTokyo 2011。今年のテーマは「Enter the Unknown 〜未知への扉〜」です。
http://tedxtokyo.com/ja/
国内外から、科学やビジネス、芸術などさまざまな分野のトップランナーたちおよそ30名を招いて、講演が行われます。当日の模様は、上記サイトでライブストリーミングされることになっています。
僕は昨年に続いて運営スタッフの一員としてイベントに関わっています。ボランティア・ベースなので、できることもできないこともありますが、昨年よりも深く関われているなと実感できるのは、自分の中では嬉しいことです。
TEDxTokyoには、いろいろな関わり方があります。スピーカーとして登壇される方、会場でイベントに参加される方、ライブストリーミングをご覧いただく方etc. 楽しみ方もまたいろいろですが、運勢スタッフとして参加するのも、TEDトークを翻訳するのとはまた違うやり甲斐があり、とても楽しいことだなと思っています(大変なことも多いけれど)。
開催まであと少し、どうぞお楽しみに。
2011年5月20日金曜日
2011年5月19日木曜日
「日本のデザイン2011」展と梅原真さんのトークイベント
ミッドタウンのデザインハブで開催中の「日本のデザイン2011」展(6/5まで)で行われた梅原真さんのトークショーに行ってきました。
「日本のデザイン2011」は、3人のデザイナーが「Re:S(りす)」の編集長などを務める藤本智士さん、そしてカメラマンとともに日本の地方を旅して、デザイナー独特の視点からその土地を見つめる、という企画です。参加したデザイナーは梅原真さん、森本千絵さん、山中俊治さん。それぞれ、秋田、兵庫、鹿児島(種子島)へと旅をしました。
デザインハブにはその旅の模様が展示されています。会場内に透明のビニールシートを何枚も吊り、そこに旅の様子が写真と文章、さらにツイッターでの当時のつぶやきなども交えて紹介するという内容。会場内を歩き回りながら上質の紀行文の「読み歩き」をするような構成がとても新鮮に感じられました(3つの旅の記録が文章でもしっかりと書かれているので、ちゃんと読もうとするとかなり時間がかかります。45分~1時間ぐらい見ておいた方がよいかも)。
この企画展に関連して、旅に出たデザイナーとカメラマン、そして藤本さんで旅を振り返るトークイベントが行われました。3日間の開催の中で、僕が行けたのは、梅原さんが参加したこの日だけ。他の2人を招いた回にも行きたかったのですが、仕事の都合でそちらは無理でした。でも、10年ぐらい前に「砂浜美術館」のことを知ってそのコンセプトに衝撃を受けてから、ずっとお話を伺ってみたいと思っていた梅原さんのトークがナマで聞けただけでも、これは本当に嬉しい機会でした(梅原さんが東京で講演やこうしたイベントに出ることはほとんどないのです)。
梅原さんは、地元・高知を中心に、一次産業の産品やサービスに関わる分野に特化したデザインを行っています。その作品やデザインの背景は、著書「ニッポンの風景をつくりなおせ 一次産業×デザイン=風景」の中でも紹介されていますが、イベントでも梅原さんのデザインに対する哲学を感じ取れるような発言が端々にありました。印象的な言葉をいくつか紹介します。
「デザインは人生相談から始まる。」
「コミュニケーションを上手くできるようにするのがデザイン。かっこいいとか悪いという問題ではない。」
「スケールが合っているということ。それは人の幸せに大いに関係している。」
デザインとは、ただ単にグラフィックを指すのではなく、売れない農産物や加工品などを抱えた農家や漁師の人が相談にやってきて、そこからデザインの仕事が始める。そして、地元の遺伝子を適度に織り込みながらデザインすることで、コミュニケーションのスイッチを入れる。それが製品を売り、経済を回し、一次産業を持続させることにつながる。-そんな哲学です。
梅原さんの言葉を聞いていると、また、「日本のデザイン2011」の旅の途中で3人のデザイナーが出会った地元の人々のエピソードを読んでいると、「ローカルが元気で幸せであること」の大切さが身に沁みて感じられました。いま自分はボランティアでTEDの活動に携わっています。これは、国境や言葉の壁を超えて良いアイデアを広めていこうという言わばグローバルな方向性をもった活動ですが、そうしたグローバル性と、梅原さんや「日本のデザイン2011」が提示しているようなローカル性を上手く結びつけることができたらすごく面白いのではないか、という思いが心に浮かんできました。
「日本のデザイン2011」は、3人のデザイナーが「Re:S(りす)」の編集長などを務める藤本智士さん、そしてカメラマンとともに日本の地方を旅して、デザイナー独特の視点からその土地を見つめる、という企画です。参加したデザイナーは梅原真さん、森本千絵さん、山中俊治さん。それぞれ、秋田、兵庫、鹿児島(種子島)へと旅をしました。
デザインハブにはその旅の模様が展示されています。会場内に透明のビニールシートを何枚も吊り、そこに旅の様子が写真と文章、さらにツイッターでの当時のつぶやきなども交えて紹介するという内容。会場内を歩き回りながら上質の紀行文の「読み歩き」をするような構成がとても新鮮に感じられました(3つの旅の記録が文章でもしっかりと書かれているので、ちゃんと読もうとするとかなり時間がかかります。45分~1時間ぐらい見ておいた方がよいかも)。
この企画展に関連して、旅に出たデザイナーとカメラマン、そして藤本さんで旅を振り返るトークイベントが行われました。3日間の開催の中で、僕が行けたのは、梅原さんが参加したこの日だけ。他の2人を招いた回にも行きたかったのですが、仕事の都合でそちらは無理でした。でも、10年ぐらい前に「砂浜美術館」のことを知ってそのコンセプトに衝撃を受けてから、ずっとお話を伺ってみたいと思っていた梅原さんのトークがナマで聞けただけでも、これは本当に嬉しい機会でした(梅原さんが東京で講演やこうしたイベントに出ることはほとんどないのです)。
梅原さんは、地元・高知を中心に、一次産業の産品やサービスに関わる分野に特化したデザインを行っています。その作品やデザインの背景は、著書「ニッポンの風景をつくりなおせ 一次産業×デザイン=風景」の中でも紹介されていますが、イベントでも梅原さんのデザインに対する哲学を感じ取れるような発言が端々にありました。印象的な言葉をいくつか紹介します。
「デザインは人生相談から始まる。」
「コミュニケーションを上手くできるようにするのがデザイン。かっこいいとか悪いという問題ではない。」
「スケールが合っているということ。それは人の幸せに大いに関係している。」
デザインとは、ただ単にグラフィックを指すのではなく、売れない農産物や加工品などを抱えた農家や漁師の人が相談にやってきて、そこからデザインの仕事が始める。そして、地元の遺伝子を適度に織り込みながらデザインすることで、コミュニケーションのスイッチを入れる。それが製品を売り、経済を回し、一次産業を持続させることにつながる。-そんな哲学です。
梅原さんの言葉を聞いていると、また、「日本のデザイン2011」の旅の途中で3人のデザイナーが出会った地元の人々のエピソードを読んでいると、「ローカルが元気で幸せであること」の大切さが身に沁みて感じられました。いま自分はボランティアでTEDの活動に携わっています。これは、国境や言葉の壁を超えて良いアイデアを広めていこうという言わばグローバルな方向性をもった活動ですが、そうしたグローバル性と、梅原さんや「日本のデザイン2011」が提示しているようなローカル性を上手く結びつけることができたらすごく面白いのではないか、という思いが心に浮かんできました。
2011年5月8日日曜日
[読書ノート]「ニッポンの風景をつくりなおせ」
GWの連休中に開催される、高知県黒潮町・砂浜美術館の「Tシャツアート展」。今年も行くことはできませんでしたが、とても好きな場所です。大阪にいた頃は、夜行バスを使って「ゼロ泊2日」で訪れたこともありました。
東京からだとどうしても腰が重くなってしまうのですが、今年は「砂浜美術館」のコンセプトの生みの親であるデザイナーの梅原真さんの本を2冊読み、多少なりとも気分を味わうことしました。どちらも非常に面白かったので、1冊ずつ紹介していきます。
まずは梅原さん自身の手による作品集「ニッポンの風景をつくりなおせ―一次産業×デザイン=風景」です。
梅原さんは、高知県を拠点に、一次産業に関わる物品や企画のデザインを手がけている方です。目線をずらすことで、それまで気づかれなかった地域の産品が持つ魅力をあぶり出し、それを広く人々に伝えるという活動を続けています。一次産業にデザインをかけあわせて新しい価値を生み、経済を回すことで、その産業が生き延びるとともに、それに関わる地元の風景を残していくことができる - これが梅原さんの活動の源であることが、本書を通じて幾度も語られていきます。
砂浜美術館のコンセプト作りに加え、お茶や鰹、アイスクリームなど、梅原さんが手がけた産品のデザインワークとともに、それぞれにまつわるエピソードを紹介していくというのがこの本の構成です。当初書店で見かけたときは、写真で大きく扱われているデザインの紹介という側面が印象に残り、ちょっと高めの値段とも相まって失礼ながら購入には至らなかったのですが、後日手に取って読み始めると、あまりの面白さに一気に最後まで行きました。特に、各産品の開発や販売に携わった「人」に焦点を当てながら、梅原さんの主張や考えを織り交ぜつつ、デザインが生まれ完成するプロセスが語られる文章部分が秀逸です。
梅原さんが大切にしていることを本書から抜き出すと、例えばこんなキーワードが見えてきます。
「マイナスをプラスに変える力」
「情報を一つの濃縮された形にして、端的に生活者に受け渡すコミュニケーションデザイン」
「きっかけを掴んで商品をつくっていく力」
「バックできる力」
取り上げられたそれぞれの産品やデザインワークを見ながら、梅原さんの作品にはこれらの思想が太い軸として貫かれていることが実感できました。と同時に、上に述べたようなことは、地域の一次産業だけでなく、より広い分野で大切なことなのではないかとも感じました。特に、今の日本は、一次産業の問題に加えて人口の減少、経済の停滞、震災による大きなダメージなど、いろいろな困難を抱えています。その中で、これまで通りの開発や経済成長を最優先にし続け、「前へ前へ」と進もうとするやり方とは違うアプローチも必要とされているのではないかという気持ちになっている人も、少なからずいるように見受けられます。そのような中で、この本に書かれているような、視線をずらしながら、そして必要な時にはスイッチを「後退」にも入れながら、たとえマイナスのものであってもプラスに変えていこうとする姿勢が、個人にとっても組織に取っても、とても重要なのではないかという気がします。
東京からだとどうしても腰が重くなってしまうのですが、今年は「砂浜美術館」のコンセプトの生みの親であるデザイナーの梅原真さんの本を2冊読み、多少なりとも気分を味わうことしました。どちらも非常に面白かったので、1冊ずつ紹介していきます。
まずは梅原さん自身の手による作品集「ニッポンの風景をつくりなおせ―一次産業×デザイン=風景」です。
ニッポンの風景をつくりなおせ―一次産業×デザイン=風景 | |
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梅原さんは、高知県を拠点に、一次産業に関わる物品や企画のデザインを手がけている方です。目線をずらすことで、それまで気づかれなかった地域の産品が持つ魅力をあぶり出し、それを広く人々に伝えるという活動を続けています。一次産業にデザインをかけあわせて新しい価値を生み、経済を回すことで、その産業が生き延びるとともに、それに関わる地元の風景を残していくことができる - これが梅原さんの活動の源であることが、本書を通じて幾度も語られていきます。
砂浜美術館のコンセプト作りに加え、お茶や鰹、アイスクリームなど、梅原さんが手がけた産品のデザインワークとともに、それぞれにまつわるエピソードを紹介していくというのがこの本の構成です。当初書店で見かけたときは、写真で大きく扱われているデザインの紹介という側面が印象に残り、ちょっと高めの値段とも相まって失礼ながら購入には至らなかったのですが、後日手に取って読み始めると、あまりの面白さに一気に最後まで行きました。特に、各産品の開発や販売に携わった「人」に焦点を当てながら、梅原さんの主張や考えを織り交ぜつつ、デザインが生まれ完成するプロセスが語られる文章部分が秀逸です。
梅原さんが大切にしていることを本書から抜き出すと、例えばこんなキーワードが見えてきます。
「マイナスをプラスに変える力」
「情報を一つの濃縮された形にして、端的に生活者に受け渡すコミュニケーションデザイン」
「きっかけを掴んで商品をつくっていく力」
「バックできる力」
取り上げられたそれぞれの産品やデザインワークを見ながら、梅原さんの作品にはこれらの思想が太い軸として貫かれていることが実感できました。と同時に、上に述べたようなことは、地域の一次産業だけでなく、より広い分野で大切なことなのではないかとも感じました。特に、今の日本は、一次産業の問題に加えて人口の減少、経済の停滞、震災による大きなダメージなど、いろいろな困難を抱えています。その中で、これまで通りの開発や経済成長を最優先にし続け、「前へ前へ」と進もうとするやり方とは違うアプローチも必要とされているのではないかという気持ちになっている人も、少なからずいるように見受けられます。そのような中で、この本に書かれているような、視線をずらしながら、そして必要な時にはスイッチを「後退」にも入れながら、たとえマイナスのものであってもプラスに変えていこうとする姿勢が、個人にとっても組織に取っても、とても重要なのではないかという気がします。
2011年5月6日金曜日
シーカヤッキング
先日、葉山の海で親子シーカヤッキングの半日ツアーに参加してきました。長者が崎の浜からカヤックで岬に向かい、潮の引いた磯場で生き物を観察するという内容のものです。4歳の子どもはこうした形で海に乗り出すのは初めて。怖がるかなと思いましたが、心配は無用で、かなり楽しんでいたようです。
岩の間をカヤックで通り抜けたり、海藻や海の底を眺めながらパドリングしたりといったことももちろん楽しかったのですが、磯場でガイドの方たちが見せてくれた、海の生き物や生態系に関する豊富な知識がツアーをさらに素晴らしいものにしてくれました。海好きと言いながら、磯に暮らすカニや貝の名前をほとんど知らない自分が恥ずかしくもなりましたが・・・。
イベントを主催してくれたのは、葉山のNPOオーシャンファミリー海洋自然体験センターの方たちです。クラブハウスで聞いたお話も、海や浜辺での身のこなしも、自然体で海と接している姿が伝わってきて、すごく素敵だなと感じました。今年は自分ももう少し海と接する機会を増やして行こう、と思いました。
岩の間をカヤックで通り抜けたり、海藻や海の底を眺めながらパドリングしたりといったことももちろん楽しかったのですが、磯場でガイドの方たちが見せてくれた、海の生き物や生態系に関する豊富な知識がツアーをさらに素晴らしいものにしてくれました。海好きと言いながら、磯に暮らすカニや貝の名前をほとんど知らない自分が恥ずかしくもなりましたが・・・。
イベントを主催してくれたのは、葉山のNPOオーシャンファミリー海洋自然体験センターの方たちです。クラブハウスで聞いたお話も、海や浜辺での身のこなしも、自然体で海と接している姿が伝わってきて、すごく素敵だなと感じました。今年は自分ももう少し海と接する機会を増やして行こう、と思いました。
2011年5月5日木曜日
[TED]キャロライン・ケイシー「限界の向こう側」
日本語訳のレビューをしたキャロライン・ケイシーのTEDトーク「限界の向こう側」が公開されました。困難を乗り越え、自らの信念を持ち続けることでこんなにも人の可能性は広がるのかと、心を揺さぶられました。是非、ご覧になってみて下さい。
[TED Women, 15分34秒]
[TED Women, 15分34秒]
2011年5月2日月曜日
アメリカからの友情
震災への支援について、僕の身の回りに起きていることを紹介します。ささやかな事例ですが、遠くからでも災害から立ち上がろうとしている方たちを応援しようとしている人がいること、そしてそのつながりから僕も大きな励ましを受けていることを記しておきたいと思います。
以前カリフォルニアに留学していた時、アパートの隣の部屋に住んでいたおばさんとお婆ちゃんの母子に仲良くしてもらっていました。母親のカーラが85歳、娘のローズマリーが60歳ぐらい。当時1歳だったうちの子をすごく可愛がってくれ、また息子も、隣の家で飼っていた猫(よく廊下を散歩していた)に興味津々でした。僕たちが帰国した後も、時折メールでの連絡は続け、カリフォルニアを訪れる際は2人のところに遊びに行ったり していました。
3月の震災の後、 ローズマリーがうちに電話をかけて来てくれました。それまで、彼女たちと国際電話でのやり取りをしたことはなかったので、どれ程心配してくれているのかが察せられました。津波の被害や原発の報道などを向こうで見て、僕たちのことを案じてくれたのだと思います。気遣いに感謝しつつ、大きな地震だったけれど、東京に住んでいる自分たちは大丈夫だということを伝えました。
それから2週間ほどしたある日。2人から封筒が届きました。僕たちのこと、そして被災地の人々を気遣う手紙とともに、10羽の折り鶴(以前に作り方を教えたことがありました)、そして何と100ドルの郵便為替が同封されていました。温かいメッセージ、そして「Friends forever」という結びのひと言を見て、涙がこぼれそうでした。決して裕福ではないだろう2人からいただいたお金の重さを感じつつ、2人がうちの子どもにとても良くしてくれていることを考え、被災地の子どもたちに絵本を買って送るための資金の一部として使うことにしました。そのことを報告すると、「よかった。あのお金は、どこかの団体に寄付するものでなく、直接役に立ててもらいたかったの。」という返事がきました。
そして数日前。2人から再び封筒が届き、メッセージ・カードとともに今回も100ドル分の郵便為替が同封されていました。100ドルというのは、決して少ない額ではありません。また、日本での換金時に手数料がかからないので、アメリカで郵便為替を作る時点で少なからぬ手数料がかかっているはずです。あまり負担になっていなければよいのだけど・・・と心配をしつつ、2人の友情と好意に深く感謝する返信を送りました。「直接役立ててほしい」と僕たちに支援金を送ってくれた以上、これを大きな団体に寄付する訳には行きません。2人の代理として、現地で活動をしている団体で子どもの支援を行っているところに直接寄付をしようと、現在宛先を考えているところです。
カーラとローズマリーからいただいた温かいメッセージと支援金を通じて、個人のつながりの大切さ、そして広く災害支援についていろいろなことを考えました。もし逆のケースでアメリカで地震が起きていたら、自分は2人に同じような気遣いの言葉や支援金を送ることができていただろうか?遠くアメリカからいただいた好意に比する継続的な支援を、被災地と同じ日本に住む自分が出来ているだろうか?などなど。2人の姿勢に見習わなくてはいけない点がいくつもあるなと感じつつ、人と人とのつながりを通して、最も支援をしたいと思う分野に直接お金やモノが回るような支援のあり方に、こうした形で少しでも貢献できていければよいなとも考えています。
以前カリフォルニアに留学していた時、アパートの隣の部屋に住んでいたおばさんとお婆ちゃんの母子に仲良くしてもらっていました。母親のカーラが85歳、娘のローズマリーが60歳ぐらい。当時1歳だったうちの子をすごく可愛がってくれ、また息子も、隣の家で飼っていた猫(よく廊下を散歩していた)に興味津々でした。僕たちが帰国した後も、時折メールでの連絡は続け、カリフォルニアを訪れる際は2人のところに遊びに行ったり していました。
3月の震災の後、 ローズマリーがうちに電話をかけて来てくれました。それまで、彼女たちと国際電話でのやり取りをしたことはなかったので、どれ程心配してくれているのかが察せられました。津波の被害や原発の報道などを向こうで見て、僕たちのことを案じてくれたのだと思います。気遣いに感謝しつつ、大きな地震だったけれど、東京に住んでいる自分たちは大丈夫だということを伝えました。
それから2週間ほどしたある日。2人から封筒が届きました。僕たちのこと、そして被災地の人々を気遣う手紙とともに、10羽の折り鶴(以前に作り方を教えたことがありました)、そして何と100ドルの郵便為替が同封されていました。温かいメッセージ、そして「Friends forever」という結びのひと言を見て、涙がこぼれそうでした。決して裕福ではないだろう2人からいただいたお金の重さを感じつつ、2人がうちの子どもにとても良くしてくれていることを考え、被災地の子どもたちに絵本を買って送るための資金の一部として使うことにしました。そのことを報告すると、「よかった。あのお金は、どこかの団体に寄付するものでなく、直接役に立ててもらいたかったの。」という返事がきました。
そして数日前。2人から再び封筒が届き、メッセージ・カードとともに今回も100ドル分の郵便為替が同封されていました。100ドルというのは、決して少ない額ではありません。また、日本での換金時に手数料がかからないので、アメリカで郵便為替を作る時点で少なからぬ手数料がかかっているはずです。あまり負担になっていなければよいのだけど・・・と心配をしつつ、2人の友情と好意に深く感謝する返信を送りました。「直接役立ててほしい」と僕たちに支援金を送ってくれた以上、これを大きな団体に寄付する訳には行きません。2人の代理として、現地で活動をしている団体で子どもの支援を行っているところに直接寄付をしようと、現在宛先を考えているところです。
カーラとローズマリーからいただいた温かいメッセージと支援金を通じて、個人のつながりの大切さ、そして広く災害支援についていろいろなことを考えました。もし逆のケースでアメリカで地震が起きていたら、自分は2人に同じような気遣いの言葉や支援金を送ることができていただろうか?遠くアメリカからいただいた好意に比する継続的な支援を、被災地と同じ日本に住む自分が出来ているだろうか?などなど。2人の姿勢に見習わなくてはいけない点がいくつもあるなと感じつつ、人と人とのつながりを通して、最も支援をしたいと思う分野に直接お金やモノが回るような支援のあり方に、こうした形で少しでも貢献できていければよいなとも考えています。
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