2011年6月4日土曜日

[読書ノート]「おまんのモノサシ持ちや!」

先日のエントリで、デザイナー梅原真さんの著書「ニッポンの風景をつくりなおせ―一次産業×デザイン=風景」について書きましたが、梅原さんを取り上げたもう1冊の本を紹介します。

おまんのモノサシ持ちや!
おまんのモノサシ持ちや!篠原 匡

日本経済新聞出版社 2010-06-26
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こちらは、日経BPの記者である著者が、梅原さんの活動を取材して著した本です。本人による書とこうした本がほぼ同時期に出版されるのも珍しいことだと思います。梅原さんは、日経の本の取材を受けていたために当初は「ニッポンの風景をつくりなおせ」の企画を渋ったそうですが、最終的にはそちらは”作品集”だという位置づけで仕分けをして出版に同意したそうです。

両方の本を読んでみて、「やはりどちらも出版してくれてよかった」と強く感じました。梅原さんが自ら、自分の作品やデザインした商品やサービスに対する依頼主の思いを綴る作品集がある一方で、少し離れた視点から梅原さんの仕事への取り組み方を読み解く本が別にあることで、より立体的に梅原さんのデザインに対する哲学とでも呼べるものが浮かび上がっています。

どちらの本からも強く感じられるのが、梅原さんがデザインを、生産者と消費者をつなぐコミュニケーションのあり方だと考えている点です。コミュニケーションのスイッチを入れ、人が商品やサービスに関心を向けるようになるためのツールとして、デザインは大きな可能性を持っているというのです。この本では、梅原さんが通常ネガティブに見られている要素(マイナス)を掛け合わせることで「プラス」を生み出し、それが意外感を持つことでコミュニケーションのスイッチを入れている、と分析しています。そしてそのために重要なのが、「自分たちが何者なのか、それを表明すること」だとしています。

デザインが、グラフィックや色づかいのカッコよさといった表面的な意匠の問題に留まるのか、より深く本質的なものをわかりやすく伝えるものになっているのかの違いは、このあたりにあるのではないかと感じます。

また、この本では梅原さんがグローバル化の時代の中でローカルが持つ意義について語った言葉が紹介されていました。グローバル化が進むほどローカルが持つ文化や伝統、多様性が大切になり、ローカルな資源を地元の人々の手で活用していくことが強みになる - というその主張に、深く共感しました。

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